
私はここ和合でピアノ教室を始めましたが、生徒さんくるの?と聞かれます。そう、わざわざ険しい道のりを経てこの山奥に入ってくる人もなかなかいないのでそう思って当然です。
私自身も長い間ピアノをやめていたし、ただ単に息子の保護者として山村留学に来ただけでした。
ではなぜピアノに目覚めたのか。
和合の人口は約170人ちょっと。人口密度を計算してみたら1km²あたりわずか3人足らずでした。自分の周りはほぼ自分と自然だけ。こんな環境こそが私の魂に火をつけました。

所狭しと楽器がならぶ
さて、山村留学が決まると当時はまだ珍しかったリモートワークに切り替えてもらい、慣れない環境で仕事に育児にと山暮らしを始めました。数か月が経ってやっと生活に慣れ始めた頃、ふと
山々に囲まれてどこからも川の音が聞こえ、
夜は何一つ見えない漆黒の闇に包まれ、
その中で星が大きく輝き、
朝になれば雪をまとった樹々が朝日を浴びてキラキラとまぶしい、
そんな景色の中に自分の生活があることがなんとも不思議に思えました。
あぁ!この中に混ざってピアノの音を出したらどんな風に聞こえ、どんな気持ちになるのか?そう思うと居ても立ってもいられず、すぐに実家からピアノを取り寄せ、そこから怒涛のピアノ再開生活が始まりました。
家の周りで弾くのはもちろん、標高1,600mで雲海にまみれながら演奏したり、森の中でゾンビになって怖い曲を弾いたり、田んぼの中で演奏してみたり、自然と一体になって音楽をしてみたいという欲求を次々に叶えました。
思い立ったらすぐに実現できる環境や一緒にやってくれる方々がいることに幸せを感じました。
ちなみに車を運転していると、どこもかしこも演奏の背景として映えるのでたまらないです。

お披露目の場もたくさんありますから練習にも力が入ります。


ここは24時間365日音を出しても誰にも迷惑を掛けないというピアノ練習にはもってこいの場所。ある日窓を開けて弾いていたら、ピアノの音色に気づいたあるママさんが「子どもが以前ピアノを習っていたので一緒に弾いてほしい」と話しかけてくれました。そこから「大人だけどピアノを教えてほしい」「孫の為に教室をやってほしい」「ピアノ伴奏で歌ってみたい!」などお声がけをいただき、音楽のご縁が繋がり始め、教室を始めることになりました。
こんな風に皆さんが移住者に気さくに声をかけてくれることも新参者にはとても嬉しいことです。もちろん交流を図るというありがたい側面もあるかと思いますが、自己成長を追求する皆さんの強い意欲を感じます。

そしてここは安心してそれぞれが自分を表現し合える場所であることも魅力の一つです。それは決して音楽でなくとも。

そうそう、そもそもは息子の山村留学で来ているのでそのお話も少々。
当初、息子には和合小がいいなと思って移住しました。公立らしからぬ?(失礼!)和合小学校は驚くことばかりて、通わせて本当によかったと思います。最近では、昔と今で教育が全く変わっていない!という意見もよく見かけますが、その観点からいうと、和合小は結構最先端であると思います。
ですが息子自身がこの移住をどう思ってるかわからないし聞いたことはありません。どうだったのかはいつか息子が自分で振り返ってみた時に任せます。彼にとってどこが正解なのかではなく、小学生の息子は確かにここで育ったんだ、ということだけだと今はそう思えるのです。
最後になりますが、忘れていたピアノへの情熱を再び蘇らせてくれた南信州の自然と、音楽のご縁を繋いでくれた和合の方々に感謝です。
息子の教育移住で来てみたら、私の音楽移住になりつつある話でした。
お読みいただきありがとうございました。
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今日のライター: はっぴ
移住歴: 6年目

